産業医の仕事内容とは

大学の医学部を卒業して国家試験をパスすると医師の免許を取得することができ、医療機関で検査・診断・治療行為ができるようになります。

患者の治療に加えて、医師の免許を取得すると労働安全衛生法に基づく各種業務を行うための資格を取得することができます。

労働安全衛生法では一定の規模の事業所では産業医を選任することが義務付けられていて、医師免許を取得して一定の条件を満たす人がこの仕事に就くことができます。

 

産業医とは?

一般的に医師の仕事は患者の検査・診断・治療をおこなうことで、病気にならないようにする目的で患者に対して指導をすることも職務に含まれます。

医者は患者や病気になる恐れがある人に対して治療や指導をおこないますが、健康上の問題がない人は職務の対象にはなりません。

産業医は病院や診療所で勤務する医師のように患者の診断・治療などをおこなわず、職場で働く従業員が病気にならないようにするために必要な指導をしたり労働環境を整えることです。

具体的には、職場で働く従業員の事故防止や健康増進・労働災害の防止・就労可否の判断や休職または復職の判定などの仕事が含まれます。

雇用主と労働者に対して中立的な立場で職務を遂行するという点でも、病人を治療する普通の医師とは大きな違いがあります。

産業医は医療機関ではなくて一定の規模の事業所で、業種や従業員の規模に応じて選任すべき人数が定められています。

参考→ワーカーズドクターズとは | 産業医の紹介と業務サポートなら ワーカーズドクターズ

 

産業医の職務内容について

具体的な職務の内容には、衛生委員会への出席・衛生講話・職場巡視・健康診断結果チェック・健康相談・休職面談・復職面談・ストレスチェック実施者・高ストレス者面接指導・長時間労働者面接指導、の10項目があります。

 

●衛生委員会

労働安全衛生法では業種ごとに従業員の人数が50名を超える規模の事業所は、「衛生委員会」の設置が義務付けられています。

業種に応じて「安全委員会」の設置も求められていて、定期的に衛生安全委員会を実施しなければなりません。

衛生安全委員会では職務に起因する事故や健康被害を未然に防ぐための話し合いや、業務に従事する労働者に周知がおこなわれます。

 

●衛生講話

衛生安全委員会では、産業医による「衛生講話」が実施されることがあります。

衛生講話は、職場で従事する労働者の健康管理や衛生管理を目的に実施される教育活動です。

 

●安全巡視

「安全巡視」とは毎月1回は医師が実際に職場を巡視して、労働環境の確認をすることです。

チェック項目には、温度や湿度などの温熱環境・トイレや休憩室などの衛生状態・AEDや消火設備の設置状況・照明やパソコン作業の環境などの項目が含まれます。

職場環境で何らかの問題が見つかれば、衛生・安全委員会で報告して改善のための助言や指導をおこないます。

 

●健康診断結果チェック

労働安全衛生法では全ての従業員に対して定期的に健康診断を実施することが義務付けられていて、医師が健康診断の結果を確認して就業が可能かどうかを判断します。

事業主は医師がチェックして押印した「健康診断結果報告書」を作成して、労働基準監督署に提出しなければなりません。

もしも医師が康診断をチェックして就業が難しいと判断された場合は、「意見書」を作成して就業制限や休職などの措置が取られます。

 

●健康相談

「健康相談」とは、健康診断後などに従業員が希望した場合に選任された医師が健康に関する相談を受ける業務です。

長時間労働に従事している人や高ストレス状態の労働者に対して、健康相談の形で面談を実施して助言や指導がおこなわれる場合もあります。

 

●休職面談

「休職面談」とは健康上の理由で休職を希望する労働者や、体調不良が原因で欠勤・遅刻・早退が続いて休職を申し出た従業員に実施する面談です。

 

●復職面談

「復職面談」は、休職中の従業員が職場復帰を希望する際に実施される面談です。

選任された医師が本人の病状の回復状況や復職後の仕事内容を総合的に判断して、復職が可能かどうかを判断します。

職場によっては職務を遂行する際に従業員が精神的に大きなストレスを受ける場合があり、産業医は労働者のメンタル面のチェックがおこなわれます。

 

●ストレスチェック実施者

職務の内容によって「ストレスチェック実施者」を選び、ストレスチェックを実施して必要に応じて面接指導などを実施します。

 

●高ストレス者面接指導

ストレスチェックで「高ストレス者」であると判断されると、「高ストレス者面接指導」がおこなわれます。

 

●長時間労働者面接指導

職場に従事している従業員の時間外労働が1月あたり80時間を超えるような場合は、本人が希望すれば「長時間労働者面接指導」が実施されます。

研究開発職などで時間外労働時間が1月あたり100時間を超えるような場合には、本人の申し出がなくても面接指導を実施しなければなりません。

 

まとめ

産業医の仕事内容は健康状の問題が生じた人に対する指導や助言だけでなく、未然に健康被害が発生しないようにするための対策を講じることも含まれます。

必要に応じて事業主に対して労働環境の改善を勧告しますが、労働安全衛生法で選任された医師には勧告権が与えられています。

 

最終更新日 2025年5月20日 by igocars